8


歴史の島 対島


新聞の片隅で“一度は行きたい遥かなる国境の島 対島”の広告を見つけた。
国の特定有人国境離島地域社会推進交付金という長い名前の助成金を受けた格安ツアーとのこと。

海外旅行には行っても対島にはまだ行ったことが無くて、近くて遠い所だった。
博多から150km、釜山まで50qに位置する、まさに国境の島へついに行くことにした。


令和元年11月25,26日

0:45博多港からジェットフォイルに乗り込む。
壱岐島経由厳原着13:00


お船江跡

鎖国の頃、大陸との交易唯一の場所として幕府に重宝された名残として現存する遺跡。
いわゆる船のドッグで滿汐になると海水がたまる。


万松院
万松院は、対馬藩2代目藩主 宗義成が、初代藩主の父 義智の冥福を祈って建立した宗氏の菩提寺


堂内には対馬藩主の逝去に際して、朝鮮王国から贈られた三つ揃いの仏具である、三ツ具足(みつぐそく)の花瓶、香炉、燭台がある。これより大きなものがいくつかあったそうだが、戦時中金属供出されてしまって一番小さなセットが残ったとのこと。


本堂の横から百雁木(ひゃくがんぎ)と呼ばれる比較的緩やかな123段の石段が続く。
石段を上ったところに宗家一族の墓所である御霊屋(おたまや)があり、巨大な墓がずらりと立ち並んでいる。
 

上見坂公園からリアス式の海岸線を見る。あいにく小雨がパラつきだして寒々とした眺望になってしまう。

海岸線の向こうに韓国の釜山がうっすらと見えるか見えないか…。
ひどい乱視の私にはどうしても見えない。


対馬産の分厚い頁岩の一枚板で葺いた屋根。強風に小屋を飛ばされないための工夫である。椎根地区の石屋根が著名。信じられない程広い石が何枚も乗っている。支える柱や板壁は頑丈そのもの。

 
老朽化した屋根をふき替えるのに現在では何千万円もかかるので、段々瓦葺きに代わってきている。

対島の石で魚や野菜を焼いて食べる“石焼”

ホテルでは客の到着時間を見計らって石を焼いで準備する。魚貝類はもちろんだが、特産の椎茸が一番おいしかった。


旧日本海軍が掘った人口の瀬戸は当時の国家予算の3分の一を使って行われた大工事。
そこに架かる万関橋の上からの写真。対島の上下島を結ぶ赤い橋は青い海と緑の樹々に映えて美しい。

 
 烏帽子岳展望所から日本有数のリアス式海岸を360度展望できる。
いつまでも眺め飽きない絶景だった。

 
 島のあちこちで見られる地層。
泥岩で対島硯の材料となる。
 
 今回の旅は一泊二日で下対島だけ廻っただけだったが、国境の島ならではの運命を背負った歴史がそこかしこに残っていて興味が尽きなかった。

まだ独身の頃の友人がホテルに会いに来てくれた。椎茸とお手製の漬物を持って。50年ぶりの再会はなにより嬉しかった。

観光地化していない手つかずの自然が残る人情味豊かな対島にまた違う季節に訪れてみたい。

nexttop