長崎 外海地区キリスト教遺産群





雨の長崎、外海(そとめ)地区

2014年6月21日


終末五島旅行のはずだった。前日までの好天気とは打って変わって、ピンポイントのような大雨に見舞われて、搭乗手続きはしたものの福江空港が視界不良のため欠航になってしまう。
せっかく一泊旅行の準備をしていたので、何処か大雨でも無理のない所へドライブ一泊旅行をしようということになる。
長崎のホテルを予約して、今まで通ったことのないルートを走ることにした。


東彼杵からハウステンボスの横を通って西海パールラインを通り角力灘に出る。
コンビニやスタンドの類はもちろん人家も見えない。海の横の切り立った道をひたすら走る。
ふと山の斜面を振り返ると急峻な山肌に集落があり、石積みの塀に囲まれた建物が目に入ってきた。

心惹かれてUターンして登って行く。旧出津(しづ)救助院という建物の入り口に私たちを待っていたかのように穏やかな表情のシスターが座って招き入れてくれる。ボランティアの男性が中を丁寧に案内してくれた。

そこは明治初期フランス人のド・ロ神父が私財を投げ打って寒村の人たちを貧しい暮らしから救うべく設立した授産施設。
綿織物の製糸から製織、染色、素麺やパスタの製造、醤油の醸造などを行って、製産物を長崎のグラバー氏に買い取ってもらっていたということだ。
近代日本の文明開化を寒村から行ったド・ロ神父の輝かしい業績をずっと現在まで地区全体で大切に保存している。

明治初期の西欧技術とド・ロさまと今も慕われている彼の福祉思想が緑濃い景色とあいまって心に沁みた。

雨に煙った外海地区の景色に心も眼も現れたような気持ちになった。

海に面した崖の上に遠藤周作文学館が建っていた。キリシタン弾圧を題材にした幾多の彼の小説の主人公たちの心を慰めてくれるような静かな雰囲気に包まれている。
今度は天気の良い夕方にぜひ訪れて夕日に映える海や山を眺めてみたい外海(そとめ)地区のたたずまいだった。



急な坂道に建っている旧授産場
地区全部が坂道になっている。

授産場内部

遠藤周作文学館。
天候不良で私達以外、人影は見えなかったが、内容は充実していて満足できた。

朝目覚めてカーテンを開けるとちょうど豪華客船が港に入っていくのが見えた。


後日、新聞で長崎教会群が世界遺産に推薦されたことを知る。もちろん外海地区も入っていた。

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